2024/11/27

「お味噌」という文化

お味噌汁が好きではないという日本人はあまりいないと思いますが、海外でも『Miso Soup』は健康にもよいということで人気がありますね。

外国人で初めてこのお味噌汁を口にした人の中に「なぜか懐かしい味がする」という人が案外いるのです。
その理由はわからないのですが、古くからどこの国にも用いられてきた発酵食品の中で、味噌は日本特有の歴史を持ち受け継がれてどんどん進化しています。

醤油とともに日本を代表する味噌は、いつから使われどんな変化を遂げ、日本の歴史にどうかかわってきたのでしょうか。

味噌の起源

味噌の起源は、縄文時代(紀元前14000年~紀元前4世紀)にすでに穀物を塩漬けにしていた形跡などが発見されていることから、大豆の塩漬けの際に発酵菌が付着してできたのが原始的な味噌となり、そこから発展したという日本発祥の説もありますが、一般的には中国の『醤hishio』であると言われています。醤油の「醤」でもあるこの字は、中国では豆板醤や甜面醤のように「ジャンjan」とも読みますが、「醤hishio」と呼ばれるものは食物を塩漬けして保存していたものが発酵して熟成し旨味が加わったものを指します。

この「醤」という文字が確認された最も古いものは701年の【大宝律令】の中にあった「未醤mishou」という言葉です。この未醤は飛鳥時代に遣唐使によって伝えられたという「醤hishio」を日本が独自の製法で作り出した新しい調味料で、味噌という名前も未醤が言い換えられたものと言われています。この時代には大変に貴重なものであった味噌の前身は、高貴な人達がそのまま舐めたり食物につけたりして食べたと言われており、奈良時代(710~794年)には租税として醤や未醤が納められたという記録も残っています。

味噌汁誕生

その後鎌倉時代に入ると(1185年~)中国からの僧によって「すり鉢」が広まり、味噌をすり潰したところ水に溶けやすいとわかり味噌汁として食べられるようになりました。それまでの味噌はもっと豆の粒がそのままの形に近い状態だったのでしょうね。

この味噌汁の登場で「一汁三菜」という食事の形式が生まれました。とはいっても、まだまだ貴重な食材であった味噌は武士など位が高い人物のものでありましたが、健康にもよくバランスもとれたこの「一汁三菜」は現代においても理想的な献立と言われています。

室町時代(1336~1573年)には大豆栽培の奨励策に伴って大豆の生産量が増え、また麹菌も安定して作れるようになったため農民の間で独自の味噌を造るまでに至りました。味噌自体も保存食として重宝されていましたが、それまでは塩漬けにしていた食物を味噌漬けにして保存したり塗って焼いたり甘みを加えてみるなど、各地で様々な調理に用いられ食べられるようになりました。今に伝わる多くの味噌料理はこの時期に考え出されたと言われています。

独自の発展~日本を超えて

戦国時代(15~16世紀)、味噌は戦場での保存食・たんぱく源としてなくてはならないものでした。干したり焼いたりして携帯しやすくもしていたそうです。武将はその土地土地の味噌を買い取ったり盛んに味噌造りをさせ、特に戦国武将と深く関わり合いのある地方の味噌はその武将好みの独自性を発展させていきました。よく知られているのは武田信玄は【信州味噌】の基盤を作り、伊達政宗は【仙台味噌】を日本で初の味噌工場を建設してまで作らせ、豊臣秀吉や徳川家康は豆味噌である【三河味噌】を好み作らせていたそうです。

江戸時代になるとお金持ちの家ではそれぞれ自前の味噌を作っていましたが、徐々に販売用に作られるようになりました。そのころ大阪や江戸では人口が増加したため近郊の味噌では間に合わなくなり、各地から味噌が届けられ商売として大いに盛り上がると共に、庶民の食卓に一気に浸透していきました。

昭和に入ってからは戦後、西洋や欧米の食文化が取り入れられ、給食でもパンを食べるということになってくると味噌の消費量は激減していきました。当時は量り売りで売っていた味噌でしたが、プラスチック容器やパックで売られるようになると各家庭が手軽に購入するようになり、その後だし入りの味噌やフリーズドライなどより調理しやすいものへと進化していきました。

そして、飽食になり、肥満や健康障害に気を付けるようになった今、この素朴でありながらも非常に優れた発酵食品である味噌は日本から広く多くの国々の老若男女に知られ食べられるようになったのです。

寒い季節には豚汁やモツ煮に七味唐辛子をパラっとふって…たまりませんね!
食欲のない時にも気分がすぐれない朝も、お味噌汁は胃腸にも頭にもお肌にも優しく効きますよ!

テンポススターでは愛知県の八丁味噌について学び、日本各地の味噌を試食したり、八丁味噌を使った名古屋名物の味噌煮込みうどんをつくるという体験ツアーをご案内しています。↓

執筆者:himiko